施設にもよるのでしょうが、血液透析を受ける為の

いわゆる透析室

というのにも独特の雰囲気がございます。

同じ病院でも患者の待合室として使われるような広い空間に、ずらりとベッドが並んでいる。そのベッドの横におわすは、……独身者向けのワンルームマンションに置かれているような……2ドア小型冷蔵庫ぐらいの透析監視装置(血液透析用の機械)。

もし血液透析が実際に行われている最中だとすれば、各ベッドには患者が静かに横たわっており、監視装置周辺は患者ともつながっているチューブだらけで、その透明なチューブの中には赤い血液が通っている。

いきなり無人の透析室へ連れてこられ、

「ここは何をする部屋でしょう?」

とクイズを出されたとしたら、もしかすると『人工透析』という言葉ぐらいは知っている方でも、その実際を余りご存知ない方には、答えられないかもしれません。

何かの医療行為をしている部屋だ

ということは分かるにしろ、それが『人工透析』であるということまでは、考えが及ばないのではないでしょうか。

もっとも、そう思って関心を持ちつつテレビのニュースショー等を眺めておりますと、意外と透析室が画面に映し出される機会もそこまで少なくはないのだけれど。

それが医療行為だからという理由からだと思われるのですが、血液透析中には必ず医師が最低でも一人、立ち会ってくださいます。

そして、何時間かある血液透析中には、医師による診察(問診が中心)も毎回あるのが一般的です。(たぶん)

これも珍しい光景で、ずらり並んだベッドを端から医師が巡ります。

毎回恒例のことですから、ひょっとすると

『血液透析中は暇だし静かに眠っていたいのに診察にこられて迷惑だ』

ぐらいに思われる患者さんがいらっしゃるかもしれません。

そうなると、そういったことを慮った医師の思いやりもあるのか、診察はオザナリになりがちで、透析室中のベッドを片っ端から

「お変わりないですか?」を連呼しつつ医師が巡る

という、ちょっとおかしな光景となります。

俺が通っている施設でなら、医師はノートパソコンが設置されたキャスター付きの台をカラカラと押してはベッドを順に回り、

「お変わりないですか?」「ありません」「はい」

それだけのヤリトリを繰り返してはノートパソコンに何やら打ち込み、その一連の作業を透析室内にある全てのベッド……50近くある……で行うのです。

当然のことながら、『お変わりがあった患者』は任意で医師を呼び止め、そこでは真剣な診察が実施されもします。(アタリマエか(笑))

「お変わりないですか?」

「お変わりないですか?」

「お変わりないですか?」

自分のベッドの順に至るまで、その台詞が次第に大きくなっていく。

ところで、先日の俺は、確かに強い離人感に見舞われておりました。

離人感が強烈な際は幻覚や幻聴の出ることも度々で、俺には迫りくる

「お変わりないですか?」



「お金はないですか?」

に聞こえていたのです。

空耳と言えば空耳でしょう。ただ通常の空耳(?)は、

何かの拍子に一度だけ

だと思います。

たまたま一度の「お変わりないですか?」が「お金はないですか?」に聞こえることはあっても、それが毎回連続となると少し妙です。

「お金はないですか?」

「お金はないですか?」

「お金はないですか?」

隣のベッドと俺のベッドの間で、医師がカタカタとノートパソコンのキーボードを打っている。来る来る来る。

「お金はないですか?」

少し注意して聞いたつもりが、やっぱり「お金はないですか?」だ。思わずそのまま応えました。

「ありません」

そう。「お変わり」にしろ「お金」にしろ、どっちにしても問いの答えは

「ありません」

で共通しているのだ。

今度は「お金はないですか?」が自分から遠ざかっていきます。

夏は何故か離人感の強まる季節。

変な聞き間違い、妙な見間違いには注意しないとな。

長々とくだらないハナシを失礼いたしました(^_^;;