買い物へ行こうと歩いていると、小学生の高学年と思しき子どもたちが、道端でたむろしていました。

割と俺の耳は良く、子どもたちの声も聞こえてるまいります。

「あ!特定外来種だ!」

「特定外来種〜」

特定外来種。ざっくりと、

輸入や飼育(栽培)が禁止されている動植物のこと

です。繁殖力が強かったりして、もともと地域に根ざしていた生物に壊滅的なダメージを与える懸念があるため、よそから持ち込んだり人為的に増やしたりしてはならない生物だと記憶しております。

少し悲しい気分になりました。もしかすると

特定外来種

と言われた子は遠くから引っ越してきた子で、イジメやからかいの的になっているのではないかと。

恐らく授業かなにかで「特定外来種」という耳新しい言葉をならい、さっそくイジメやからかいに応用しているわけです。

そのあたりの新たに得た知識に対する順応性の高さ、賢さ、悪意あるユーモアのセンスに、子どもたちがなぜか非常に秀でていることは、ずっとイジメにあっていた俺が知っています。

『気の毒に』

とは思いつつ、時代が時代、知らないおじさんから叱られたとなれば、俺の方が捕まってしまうかもしれませんし、やはり子どもの問題は子どもの間で解決したほうがよい場合もあるでしょう。

余計なことをして「おまえのせいだぞ!」みたいなことになっては逆効果です。

『仕方がない。無視しよう』

歩みを進めると、一人の子を囲んで、まわりの子らがやはり

特定外来種

を連呼して、くったくのない笑顔を浮かべていました。

気になって目をやると、その

特定外来種

呼ばわりされている子は、黄色い花を持っています。それも根ごと丁寧に引き抜かれている。

特定外来種!

俺にはピンときました。彼が握っていた植物は、恐らくオオキンケイギク

ありふれていながらも悪名高い特定外来種です

そう、子どもたちは

特定外来種

という言葉を素直に

特定外来種

の意味で使っていたのです。……もしかすると直近の授業でオオキンケイギクのことをならっていたのかもしれない……彼らは特定外来種を発見し、退治た子をはやしているだけでした。イジメでもなんでもなかったのです。

オオキンケイギクにとっては災難ながら、おじさんは安心してスーパーマーケットへ向かいましたとさ。