周りオートバイの持ち主らしい人物の姿はない。ピカピカに磨かれたバイク。「かっこいいね」「うん」。とても大きなバイクだった。今思えば750ccとか1000ccとか、そういったクラスのバイクではなかっただろうか。と竹林の奥がガサリと鳴って、全裸の男が姿を現した。瞬間、オートバイの持ち主はこの全裸の人物だと思った。それはこの全裸の男がフルフェイスのヘルメットを被っていたからだ。まずあったのは恐怖だった。相手が全裸だったからではない。オートバイに近付いたことを咎められるのではないかという恐怖が先んじた。男はバイクの陰になって見えなかった俺たちを認めると、黙って突っ立っていた。この男はどこから来たのか。何故全裸なのか。ヘルメットの奥の表情も見えず不気味に感じた俺は「行こう」と友達に声をかけて、友達の家の方へと走っていった。