俺の弟は俺を更に上回る巨体だった。実家で親と暮らしていて、仕事で夜遅くなると、母親が夕食を取ってあることを知っていながら、コンビニエンスストアの弁当を購入してくる。しかしそれを夜食べて、空いた弁当箱など証拠が残るとイケナイので、通勤に利用しているクルマの中で車内灯をつけて食べる。そして「何も食べてませんよ。あーお腹が空いたな。今日のオカズは何かしらん」とスットボケテ帰宅。母が作ってくれたゴハンも美味そうに頂戴していた。つまり夕食が2食分。それは太るよといった感じ。更に両親が寝静まった後、近所のスーパーなどで甘い洋菓子やアイスクリームのようなものまで買って食べていた。

職場では親の目がないので更に凄まじい食欲を見せていたかも知れない。通勤はクルマでしばらくかかるのだが、その車内にはマクドナルドの包みやコンビニエンスストアの袋や容器が助手席やバックシートの足元をごちゃごちゃ占領していた。通勤しながら食品をゲットして車内で食べているのだ。朝ごはんを食べた上に。

かなりの量を短期間で食べていたので、かなり異常な太り方をした。百数十キロ。一月で十キロほど太ったこともあった。そんなある晩、小便が止まらなくなった。30分も寝るとトイレ。その繰り返し。やがて疲れ果て熟睡したところを尿意に襲われ、ミットモナイことに24歳にして寝小便を垂れた。やがて全身に謎の発疹。病院に行ったところ「糖尿病だ」ということでその日にすぐ入院。1週間後出てきたときにはある程度痩せていて、食べる量も減っていた。自分で血糖値を計る為に針を指に突き刺したり、腰に注射を自ら打ったり、勿論食べたいモノも食べられず大変だった。

俺は体重は安定していて、増減もなく、ここしばらくは食べるものにも多少気をつけているのだが、突然喉の渇きを覚え、身体の求めに従い水をガバガバと飲んでいたところ、夜もおちおち眠っていられない程の尿意に悩まされる。2時間に一度は起きる。寝ている間3度も4度も起こされる。今までそんなことなかったのだけれど。父方のおばあちゃんが糖尿、弟が糖尿という明らかな「家系」俺にも糖尿の魔の手が迫るか。糖尿にかける治療費などもない。糖尿と診断されたら無視するか、どうしようか。家族に迷惑もかけたくない。

2週間後の血液検査で明暗が決まる。今から気分が重い。